
一般的に診療過程において患者自身の医学知識が少ない事や診断の段階での対話をする諸条件が整っていない為に、多くの患者は初期検査においてより多くの検査がなされる事を望む傾向がある。
これは医学に対する信仰にも似た心性が広く存在している事に起因していると思われる。
医学社会学はこの心性を現代医学への信仰の問題として解明する予定である。
今回のアンケート調査の結果、「診察と検査、そして治療の望ましい姿」という解答の割合は「医師との対話による同意」が最も多く、60.10%であった。
対話を可能とする事によって、医師に対する患者の信頼とその技術的側面における評価を可能とする環境が整う事になる。
また、治療効果に対する結果報酬制度のような、実質的な報酬計算の基礎を創ることが可能となるのである。
対話が可能となる諸条件として、患者の側の医学的知識習得の機会が問題となる。
学校教育で一定水準の知識の習得とリカレント教育による高度な知識の習得が保証される事。
対話の時間を診療報酬の対象とする事。この部分は一定の前進をみているが医師不足もあり、まだ、不充分である。
患者が医師や医療ソーシャルワーカーに対して質問したい事の多くは、次のような内容であると考える。
1、この症状の原因は何か。
2、原因となる病名あるいは症状名は何か。
3、病気、症状をもたらす原因は何か。
4、今後はどうなるのか。治療法、通院、入院、身体症状の変化。
5、それらの事に伴う生活の変化。
患者の多くは医師に漠然とした質問する場合が多いようである。それはこうした諸点の不安な状態を抱えているからである。
医師のアドバイスはその患者との交流の深さの度合いによって、患者の不安を減少させる効果を生むであろうし、患者の不安を増す結果ともなる。
この点において、患者と医師との対話の問題が現代医学の課題となるように思われる。
この課題が未解決のまま自らの身体を医師あるいは医療機関に委ねる事は信仰以外の何ものでもない。
このような状況は医療費負担と医療保障制度が受診行為に及ぼす直接的な影響である。また、先進諸国における治療施設での医師と患者の出会いの場としての病院等の在り方として、経営理念の問題に深く関わりあっているのである。
こうした諸課題の解決なしには現代医学への信仰を払拭する事はできないのである。