
10年前の「健康に関する世論調査、東京都情報連絡室広報広聴部都民広聴課、1991、3発行」によると、東京における一般的住民の要望は次のようになるであろう。
核家族の生活基盤はそのままでよいが、専門的治療が可能な総合病院を整備してほしい。決して、在宅治療では無いという事である。
難病や専門医療を総合病院にも要望しているという事であるが、難病が癌や心臓病などを指しているのか、『難病』として法的な指定を受けた特殊疾病を指しているのか、その峻別が定かでない。
次に、こうした「世論調査」の結果を生み出す生活環境と社会的心性について分析してゆく。
都市東京における社会構造が都市の普遍的構造であるか否かを論じる予定はない。従って、類型としての都市東京である事をお断りしておく。
都市東京における社会的紐帯の一つである町会や自治会は法人格のない社団であるが、その多くが行政支配組織に組み込まれている。
その証左は行政からの広報や各種の知らせが町会や自治会を通じてなされる事である。これらの組織の思想史な位置については既に別な機会に述べたい。
住宅事情と経済構造そして変化する社会的心性、こうした事が医療においても反映し、都市に於いては在宅治療ではなく総合専門病院での治療を選択させているのである。
つまり、個人の自立した自由な人生を最優先させる為には総合専門病院が必要であり、その質的変化が求められている。
どのような質的向上が求められているか。その回答のひとつは次のようなものとなるだろう。
病院内で患者は自宅にいる時と同様にくつろげる事。そして、病歴管理や身体状況の管理が厳格になされている事。また、専門医が身近にいて最新の診療設備が完備している事である。
これは一般的な個人が求めるであろう理想を推定したものだが、既に述べたように都市部でこの傾向はより強いものであると推定される。
また、個人的な見解を付け加えるならば、院内感染の防止が充分に成され清潔感がある事、一定期間で病院と施設の改築と更新が必要である事などを挙げたい。
これらの要望を実現する為には病院設計のデザイン面に置ける全面的な見直しと医療関係者の分業と協業そして人員確保の為の財源的保障が必要である。