医療と都市構造



神津島における医療環境を対象に医療と村落構造の関係を論理解析したが、現地踏査が遅れているため割愛をする。その次に展開したのが、医療と都市構造の関係についてである。
都市東京を外形的に特徴づけるのは狭い住居である。
都市東京の居住空間は農村と比較した場合、物理的な要因として家族社会関係に影響を及ぼすと考える。
 農村社会では隠居が重要案件に決定に長老支配的な力を持っている。都市東京では隠居が社会的な生産関係から疎外さた結果、家族社会に於ける地位も低下している この社会経済的な相違が都市構造の心性を知る有力な手掛かりとなる。
都市東京では隠居となった者が、年齢階梯制とか家父長制あるいは隠居制という概念の厳密な分析対象として適用可能な状態にあるのかさえ疑問なのである。
つまり、こうした意味内容とは関わりなく単に社会的疎外者となっているのではないだろうか。それとも、そうした伝統的意味の解釈換えをすべきなのだろうか。
事例の解析により、その事情についての意味を理解する事により、都市構造における家族社会関係分析の手掛かりを得る事が可能となると考える。
此所で都市東京の歴史地理的な概要を述べ理解の一助としたい。
東京は江戸期において江戸城内濠の外側に武家屋敷と商家を持ち、外濠の外側の北部と南部そして西部に近郊農村部を持ち、明治期以降に急速にそれらが都市化されてゆく過程において多くの外部流入者も増えた。
そして、現在の都市東京においての年齢階梯制や隠居制また家父長制の意味は一地方の特徴を説明する民俗学的性格を意味するものではなくなっている。
新たな意味はこの都市の混沌状態を説明し分析して理解する為の社会学的手段となっている。 社会分析のための概念装置という実在に対する観念という相対的な存在へと変化したのである。
都市東京の混沌とした構造を混沌状態として理解する事により、都市構造における新たな支配原理を見つけ出す可能性を見つけることができるのである。
 東京が混沌とした社会である事は、この都市が一定の支配原理で解明できない事や市街地に大家族型の住居や集落のような建築物が多量に見られない事そしてアンケート調査結果のように墓所の所在と出身地の明確な相関関係が無い事などから明白である。
この現象を分析した結果から次のような事がわかる。
混沌とした社会は一方に於ける無原則的な法秩序を表出させる事である。また、唐突にその無原則的な法秩序を消失させる事である。
他方、経済の不法とも思える無秩序な発展がある。現代は法の再生が変革期を経ずして一定の体制内で果断なく変化して発生する。
それは混沌状態の特徴である局部的な秩序化とその無秩序な集合となって現象化している証左なのである。